さて、アメリカ企業は2019年第2四半期の決算シーズンが始まりました。
まだ、決算発表が本格化してほんの数日ですが、既に傾向として見えてきた事がいくつかあります。全体に言えることとしては、米中貿易戦争の影響は4-6月期では一部の業界に限定的で、アメリカの消費はまだまだ強いということです。また、個別で一番気になったのはNetflixで、8年ぶりのアメリカ国内契約数減少は注意が必要です。
- 米中貿易戦争の影響が一部の業界で大きな影響が出ている。輸送企業、製造業には暗い影
- 米国個人消費は強い。
- 単体企業で一番変化が大きいのはNetflix。競合がこれからサービス展開を控える時期に、既にアメリカ国内で契約数が純減が始まっているのは何かおかしい
米中貿易戦争の影響は業界で明暗
まず、決算シーズン初日の7月16日は主にアメリカ大手銀行の決算報告から始まりました。5月に米国も中国も互いの輸入品に追加関税をかけて、世界的に景気が減速すると心配されてましたが、少なくとも大手銀行にはその貿易戦争による業績の悪化が見られませんでした。こちらは一安心ですね。
しかし、7月17日のアメリカ東部で最大規模の貨物鉄道会社CSXの決算では、景色が一変しています。利益は予想を下回り、通年の売上見通しも引き下げた結果、CSXは10.3%下落し、2008年以来の大幅な下げ幅になっています。こちらは、貿易摩擦が影響し、上期のトラック・鉄道の貨物輸送量が減少したことが業績を押し下げたと見られています。
これを受けて、まだ決算報告をしていない大手鉄道会社のユニオン・パシフィックまでもが6.6%の下げる展開になっています。
どうも、貿易の動向が直接業績に直結する業界では、既に2019年4-6月期の決算で影響が出始めているようです。FRBが17日に公開した資料(地区連銀経済報告:ベージュブック)では、米中貿易戦争が輸送企業や製造業への重しになっていると指摘しており、そのとおりの決算の内容になっています。
ここまでの展開をまとめると、米中貿易戦争の影響は限定的、しかし輸送企業や製造業には確実に暗い影を落としていると言えます。
米国の個人消費は強い
2つ目の気になったことは、予想以上のアメリカ国内の消費の強さです。
ネット通販サイト大手のイーベイは売上高と利益が市場予想を上回ってます。また、大手銀行の中でも個人向け金融サービスを手がけるウェルズ・ファーゴ、JPモルガン・チェース、シティの3行の業績は良かった一方、個人向けの大きな部署を持たないゴールドマン・サックスの業績は唯一減益決算になっています。
4-6月期は、失業率も低く、緩やかに賃金も上昇したので、消費者はクレジットカードで買い物を増やし、また住宅ローン金利の低下から新たなローンを組む動きがあった模様です。
Netflixの異変
さて、今までアメリカ国内の消費や、業界動向などの全体観を見てきましたが、単体で一番気になったのは動画配信サービスを手がけるNetflixです。
7月17日に発表した決算では、アメリカ国内契約数が13万人減したことが発表され、株価は時間外で13%下落しました。13が続いて不吉ですね。
国内の契約数減少は、2011年以来で実に8年ぶりです。しかも、この秋にAppleやディズニーなどのライバルの動画配信サービス提供が始まりますが、その数ヶ月前から既に契約数減少が始まっている点は要警戒です。
ディズニーはNetflixに数々のヒット作品を提供していましたが、ディズニー独自の動画配信サービスDisney+のサービス提供を前に、次々と作品をNetflixから引き上げているといいます。その影響があったのかもしれません。この辺りは少し深ぼってみたいと思います。