S&P500は1月24日(金)と27日(月)の2日間、久々に下落しました。とくに27日は1.5%下落し、2019年10月以来3ヶ月ぶりの下落になりました。
感覚的には1.5%の下落はそれほど珍しくないと思っているのですが、3ヶ月間もそれがなかったところに、2019年10月からの好調ぶりが見えます。
1月から中国で流行している新型コロナウイルスの恐怖から株が売られたようです。でも、個人的にはウイルスは単なるきっかけで、本当の原因は、2019年10月以降に株が上昇しすぎて割高になっていたので、株の価格調整をしているように見えます。
現時点では、新型ウイルスの経済への影響(特にアメリカ経済への影響)は限定的と見られているからです。
新型ウイルスのアメリカ経済への影響
新型コロナウイルスのニュースが大量に流れているので、とても重大なことが起こっているように見えます。
でも、冷静になって数字だけみると、致死率から判断するに新型コロナウイルスは2003年に流行したSARSよりもかなり毒性は弱そうです。そして、インフルエンザほどの流行もしていないようです。
※あくまでも現時点での話です。ウイルスは感染途中で変異する可能性は十分あります。
感染者数(A) | 死者(B) | 推定致死率(B÷A) | |
---|---|---|---|
新型コロナウイルス | 40,171人 | 908人 | 2% |
SARS | 8,273人 | 774人 | 9% |
インフルエンザ | 10億人/年 | 約25-50万/年 | 0.025-0.05% |
※上の表は2月9日時点のものです。最新のデータはこちらでご確認下さい。
また、インフルエンザと新型ウイルスでは致死率が違いすぎるので比べて良いものかわかりませんが、数字だけ見ればインフルエンザのほうが患者数、死者数ともに大きく新型ウイルスを上回っています。
SARSは主にアジアだけで流行した病気でしたが、東アジア・東南アジアのGDPを0.6%押し下げて180億ドルの経済損失が出たとアジア開発銀行が推計しています。
2003年当時よりも、今は中国とアメリカの結びつきが強くなっていますが、新型コロナウイルスがアメリカ経済に与えた影響はほぼゼロでしょう。もしも、アメリカに180億ドルの損失が出たとしても、アメリカのGDPの0.1%でしかありません。
新型ウイルスの株価下落は、実害よりも人々の恐怖が支配しているようです。
株価下落の原因
新型ウイルスが株価下落の原因ではなく、下落のきっかけを与えたのだろうと思います。
以下の記事でも紹介しましたが、ジェレミー・シーゲル教授は、2019年からのアメリカ株は株価上昇のペースが早く、ちょっとした出来事でも株の下落が起こりやすい相場になっていると、短期的な下落を警戒する指摘がありました。
シーゲル博士、20年1月中にダウ3万ドル予想。ただしリスクも顕在。
米国株の分析に定評があるジェレミー・シーゲル氏が、2020年1月中にもダウが30,000ドルに到達すると予想する一方で株価が一旦下落するリスクも上がっていると警戒しています。長期投資家に対しては「市場から撤退する理由はない」と言いつつ、短期投資家に対しては「市場の動きに注意するように」助言しています。
シーゲル博士の指摘
- 企業の利益よりも株価の上昇が少し早いと心配している(つまり、割高に向かいつつある)。
- このまま株価が上がりすぎてしまうと、些細なことで下落しやすくなる。【現在ここ】
- 上昇トレンドに乗ろうと株を買っていたトレンド投資家が降り始めれば、株の下落が加速する恐れもある。
この指摘は、新型コロナウイルスの流行が話題になる前の2020年1月の発言です。そして、もしも些細なことで下落が起こった場合への対処法についても、シーゲル博士はコメントしています。
長期投資家なら大丈夫だ。パニックになったり、市場から降りる理由はない。でも数週間で利益を得たいと思っているタイプの投資家は、市場の動きを注意深く見たほうが良い(ジェレミー・シーゲル)
私もシーゲル教授の意見に賛成です。長期投資家はしばらく、様子見で良さそうです。